ホテルバイキングの原価管理で
よくある3つの失敗
バイキングや朝食ビュッフェは、単品提供のレストランとは原価の構造がまったく違います。「一人あたりいくら食べるか」が読めない以上、原価は常に振れる。この前提を踏まえずに管理しようとすると、現場は疲弊し、数字は改善しません。
前提:バイキングの原価は「提供量」で決まらない
通常のレストランなら、1皿の原価は決まっています。100皿出れば原価は100皿分です。ところがバイキングは違います。並べた量が原価であって、食べられた量が原価ではありません。100人分並べて70人分しか食べられなければ、残り30人分は廃棄になり、そのまま原価に乗ります。
つまりバイキングの原価管理とは、突き詰めれば「並べる量をどれだけ精度よく決められるか」の管理です。ここを外すと、どれだけ仕入れを安くしても利益は残りません。
失敗1:品数を「豪華さ」だと考えてしまう
満足度を上げようとして品数を増やす。これが最もよくある失敗です。品数が増えると、次のことが同時に起こります。
- 1品あたりの提供量が減り、どの料理も中途半端に残る
- 食材の種類が増え、発注・在庫・仕込みが複雑になる
- 厨房の作業量が増え、人件費が上がる
- 使い切れない食材が増え、廃棄が増える
そして重要なのは、品数を増やしても満足度はそれほど上がらないということです。お客様の満足を決めるのは品数ではなく、「これが美味しかった」と言える1品があるかどうかです。
失敗2:廃棄量を誰も数字で持っていない
「今日は結構残ったな」という感覚はあっても、それが月次でいくらの損失なのかを把握している現場は多くありません。廃棄が数字になっていないと、次の判断ができなくなります。
- どの料理が、どの曜日に、どれだけ残っているのか
- 提供開始から終了までの、どの時間帯で余っているのか
- 稼働率に対して、仕込み量が適正なのか
まず取り組むべきは、精緻なシステムの導入ではありません。料理ごとに「残った量」をざっくり記録するだけで十分です。1〜2ヶ月続ければ、どの料理が慢性的に余っているかが必ず見えてきます。
そこまで来れば、あとは打ち手の話です。並べる量を減らす、提供終了時間を早める、小さい器に替えて回転させる。判断材料さえあれば、対策は現場で作れます。
失敗3:館ごとに仕入れがバラバラのまま
複数の施設を運営している場合に、特に大きな金額が眠っているのがここです。それぞれの館が、それぞれの判断で、それぞれの業者から仕入れている。この状態だと、次のことが起きます。
- 同じ食材を、館によって違う価格で買っている
- 全社での取扱量が大きいのに、その規模を交渉に使えていない
- どこかの館で使い切れなかった食材を、他館に融通できない
ここで有効なのが、主要食材の集中購買です。全館で使う品目を洗い出し、規格を統一し、まとめて交渉する。全食材でやる必要はありません。使用量の大きい上位品目だけでも、効果は十分に出ます。
集中購買を進める際の交渉手順は、食材の仕入れ価格交渉のやり方をご覧ください。
まとめ
バイキングの原価改善は、「安い食材に替える」ことではありません。整理すると、次の3ステップです。
- 並べる量の精度を上げる(=廃棄を減らす)
- 品数を絞り、目玉に集中させる(=満足度を落とさず原価を移す)
- 仕入れを束ねる(=同じものをより良い条件で買う)
この3つは、お客様から見える品質を落とさずに実行できます。むしろ、うまく進めれば満足度は上がります。